漫画:彼女はろくろ首(1〜3巻)
二駅ずいさんによる少しおかしなラブコメです。
twitterで面白い絵を描いていた方なので、
ドタバタでそこかしこに星が飛ぶような
派手なギャグになるかと思いきや、
作品を通して温度感がい〜ぃ感じにぬるいのです。
とってもい〜ぃ感じです。
題名の通りろくろ首の女の子が主人公なのですが、
1巻では当たり前のように日常が過ぎていきます。
2巻、3巻とお話が進むにつれ、徐々に作中の世界が明らかになっていくのですが、
この明らかになっていく過程がものすごく綺麗です。
第1話で来そうな設定の説明が一切なく、
登場人物の関わりの中で、出てきた疑問点に全て答えが出るため、
「あぁそうなのか!」という感動を何度も味わえます。
何にせよ、一番推したいのは
あの稲川淳二氏も絶賛した、ろくろ首の彼女の可愛さです。
事あるごとに「ん゛ッ」となります。
嘘だと思ったら読んでみてください。なるから。
僕はモブキャラとおまけ漫画も目が離せなくなっています。
すごく人にお勧めしたい漫画です。
ぜひに。
映画:舟を編む
amazonプライムで見放題の映画になっていたこともあり、まだ読んでいなかった原作の小説と合わせて観てみました。
新しいコンセプトの国語辞典を作る為、編纂作業に心血を注ぎ奮闘する人々が、時代の移り変わりと共に描かれている作品です。
小説では主人公の馬締の性格が一癖ある変人として描かれていますが、映画では言葉好きのオタクといったように描かれています。
言葉について悩むシーンでも、小説と映画で悩み方が違っています。しかしニュアンスとしての違いですので、小説を読んでいても十分に新鮮なシーンだと思います。
言葉の海を渡る舟、というコンセプトで劇中で編纂される国語辞典「大渡海」に合わせ、この映画では静かな波の音が使われています。一人で黙々と作業している馬締と一緒に、言葉の海へ潜ってしまうような感覚になりました。
一番馬締に共感できたのは、下宿に現れる猫の後を追っていくと、その猫を抱いて宮崎あおいがベランダに立っているのを見つけて、彼が腰を抜かしてしまうシーンです。
下宿先の主人である、お婆さんの孫という役柄なのですが、多分あの状況じゃ誰だって腰を抜かしてしまうのではないかと・・・そして、僕と似た考えの人なら、心底羨ましいと思ってしまうのではないかと思います。
お話は、極めて静かに進んでいきます。逆境に声を荒げることもなく、上役に理解を求める熱い直談判のシーンもありません。
ですが、辞書の編纂作業に取り組む人々の鬼気迫る表情や、静かな会話のやり取りの中に、じわじわとくる熱さを感じました。
松田龍平さん、宮崎あおいさん、最近話題になったドラマ「重版出来!!」で活躍された黒木華さん、オダギリジョーさんの演技も素晴らしい作品です。
小説と合わせ、違いを楽しんでみると面白さが増すかもしれません。
近々アニメ化もされるらしく、楽しみに思っています。
映画:ちはやふる
観終わってからずっと、スクリーンに映っていた画面の綺麗さが忘れられません。
並べられたカルタをはさんで向かい合い、競技者同士が放っている緊張感の表現は鬼気迫るものがあり、その大会の場にいるかと錯覚させられるほどでした。
これほどまでに、買ったコーラを邪魔に感じたことはありません。
映画といえば大迫力の音響も一つの魅力ですが、この作品で使われる静寂が本当に素晴らしいのです。
自分の心音と呼吸音が際立つ中、画面の中の人達と固唾を飲んで勝敗の行方を見守り、一つ一つの挙動に鳥肌が立ち、姿勢が前のめりになっていることに気づくのです。
中でも印象に残っているのは、下の句でのちはやふるというタイトルの所以たるシーンです。
あの瞬間の壮麗さ、凛とした神々しさに心をすべて奪われました。
原作未読でしたが、この作品を知れて良かったと感じています。