週刊:浮草日記

日々の興味を綴るブログです

映画:シン・ゴジラ

虚構 対 現実 (日本対ゴジラ)というキャッチコピーの通り、

”もし現実の日本にゴジラが現れたら”というコンセプトで作られたゴジラ映画です。

 

とんでもない一作でした。素晴らしい作品だと思います。

 

ゴジラのような巨大生物に対してどのように対応するのかを入念に取材されている分、

会議の進行もなんだか説得力のあるものになっているように感じました。

 

アクアライン崩落から前半、政府の対応がもどかしくなるほど後手後手なのもリアルです。

 

そこにいるのはゴジラなんだよ!半端ないんだよ!なんていうことを思いながら、

早くこんな政府に目にもの見せてやれゴジラ!と期待していました。

 

そして、第2形態のゴジラが蒲田へ上陸します。

 

えぇ、エラある!

 

目ぇグロい!

 

血ぃめっちゃ吐く!

 

異様でいて、死ぬ気で探せば本当にいそうな生物感に気圧され、

道路を這いずり回る様子に慄く中、ゴジラは第3形態に進化します。

 

そして、聞いたことのあるあの鳴き声!

興奮しましたが、まだ予告で見た姿とはかけ離れています。

 

まだ人がいるマンションをお構いなしになぎ倒しながらそれは進んでいきますが、

一度海に戻って行ってしまいます。

 

そこで政府は自衛隊と共に再上陸時の対策を立てます。

この映画で大きな役割を持つ、”巨災対”もこのタイミングで設立されます。

 

巨災対での場面には、ティンパニを使ったあのBGMが多く流れます。

さぁ反撃だ!という勢いに乗せられた場面です。アツい。

 

そして、みんな頑張ってる、いけるぞと士気が高まった時、

第4形態になった、CMでよく見た姿のゴジラが登場します。

 

ここでも、また想定外です。

第3形態のゴジラに対応できるように立案された作戦も、全く歯が立ちません。

 

それどころか、ゴジラの意に介していない様子です。

 

武器を全て使用できる自衛隊が全く歯が立たない様子を見ているうちに、

”過去の作品で親しまれたゴジラ”ではなく、

”凄まじい力を持ったゴジラという名前の何か”を見ている気持ちになりました。

 

自衛隊の作戦も失敗し、東京の中心で米軍の爆撃機による支援攻撃が始まります。

 

爆弾を背に受けて鳴き声をあげるゴジラが背を丸め、

避難用のヘリポートで政府の大臣たちが歓声を上げます。

 

そして、第5形態に進化したゴジラの背びれが紫色に発光し始めます。

 

悲しげな音楽の中、ゴジラの口が開き、顎が二つに分かれ、喉の奥から光がせり上がります。

 

ロケットの点火直後のような煙を吐きだし、その次にビル街を飲み込む火炎を吐き出します。

 

火炎はジェットエンジンのような音と共に光線に変化し、

大臣を乗せたヘリもろとも東京を火の海に変えてしまいます。

 

やった!ついに熱線を吐いた!というような高揚感はなく、ただただ画面を眺めていました。

残酷なほど強力な熱線を吐き出すまでの過程が素晴らしすぎて、ただ感動していました。

目も潤みました。

 

大きく分けて、ここまでが前半の話になります。

 

東京を焼け野原にしたゴジラに対し、政府がどう対応していくのかは後半になるのですが、

ここからは”現実にかなり近いけどフィクション多め”の展開になっていきます。

 

後半の話はさておき、2回見て思ったことを少々書きます。

 

終盤のセリフに出てくる”スクラップアンドビルド”は、この作品全体の流れを表したものだと感じました。

 

この映画の中では、常識が覆され、現実的な最適の作戦が破られ、政治的なシステムが壊されますが、

生存した人々によりそれらは再建され、状況に対応できるように変化していきます。

 

そして同様に、”ゴジラ”というものについていたイメージをぶち壊し、

この時代に適合した”ゴジラ”が見事に作り上げられています。

 

 

評論家の方々を悪く言うわけではありませんが、影響を強く受ける子供時代にヒーローであるゴジラに親しんだ世代には、受け入れ難い内容であると思いました。

 

 

さらに、綺麗なテンポでの展開のためにやりすぎなくらい説明・描写が省かれているため、

ゴジラと日本という主軸に絞って話を追うことができました。

 

しかし、少ないカットの中に詰め込まれた情報の量が尋常ではないため、何度観ても何か見落とした気分になってしまいます。

 

「あそこああだったよね!」「マジで!」

 

というやりとりが尽きなくなってしまうのです。ほんの少ししか写ってないのに、

 

「あれ、こんな人も出てたの!?」

 

となる回数も半端じゃないです。

 

 

風景や無音といった空白で映画にすっと入り込めた「ちはやふる」とは逆に、

詰め込みに詰め込んだ映像と会話で人を置き去りにする「シン・ゴジラ」ですが、

両者ともに素晴らしく面白い作品だと思います。

 

 

いろんなところに散りばめられた伏線のようなものや、あのラストシーンについて、いろいろな場所で左右中立肯定否定様々な意見が飛び交っていますが、

まさに庵野監督が”好きにした”結果、”好きにさせられた”に過ぎず、

その真相は監督の頭の中にしかないと思うと、グワァァ悔しい、答えを知りたい!と思ってしまいます。

 

僕も自分の好きにした結果、2回観た後パンフレットもサントラも買ってしまい財布が一気に寂しくなりました。

 

細かいところは文字に起こすのも面倒で、誰かと論争したくなる作品です。